10,000以上の島から構成されているインドネシア。東西の距離は5,000km以上にもなり、EEZ(排他的経済水域)面積は世界3位の群島国家である。
小さな島の移動は船舶が主流だが、大きな島の移動は近年LCCの発展によって航空機が多く利用されており、年間総旅客数は1億人にも上ると言われている。その分、最近は航空会社間の空の競争が激化しており、各社便数や路線、そして価格で争っており、様々な特徴がある。
今回は、そんなインドネシアで主要な航空会社をピックアップし、それぞれの特徴について比較したい。なお、料金比較については別の機会に…。
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ガルーダ・インドネシア航空(Garuda Indonesia)
1949年に政府系航空会社として設立された。いわずとしれたインドネシアのナショナルフラッグキャリア。フルサービスキャリアで、唯一日本にも直行便を就航している。ガルーダマイルズというマイレージプログラムがあり、スカイチーム所属。
国内線の最も遅延のないかつ最も高価な航空会社。ジャカルタのスカルノハッタ国際空港ではターミナル3を専用ターミナルとして使用している。
かつてはGA152便墜落事故などが発生し安全性が疑問視され、2007年にEU域内の飛行乗り入れを禁止されていた。しかし、その後立て直しを図り、現在では航空会社の格付け調査を行なうスカイトラックス社の2017年ワールド・ベストエアラインランキングで10位につけており、ベストキャビンスタッフ部門では1位を獲得した。
座席 | エコノミークラス・ビジネスクラス・ファーストクラス(ボーイング777-300ER) |
飲食物 | 無料(国内線など一部路線では酒類の提供なし) |
機内エンターテイメント | 国際線と国内線長距離路線ではあり |
シートピッチ | 30~35インチ(E)、42~74インチ(C)、82インチ(F) |
預け荷物 | 20kg(E・国内線)、30kg(E・国際線&C・国内線)、40kg(C・国際線)、50kg(F) |
マイレージプログラム | ガルーダマイルズ(Skyteam) |
2019年Airlineratings.com安全性評価 | ★★★★★★★(最高評価) |
ちなみに残念ながら、ガルーダマイルズはかなり使い勝手が悪いです。
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シティリンク(Citylink Air)
2001年に設立されたガルーダ・インドネシア航空の子会社。スラバヤのジュアンダ国際空港を拠点とするLCC。設立当初はガルーダが就航していない路線を担当していたが、収益悪化のためドル箱路線も担当。
2016年にパイロットが飲酒して操縦したとして、社長が辞任している。
インドネシア運輸省や地元メディアによると、機長は28日早朝、第2の都市スラバヤから首都ジャカルタへ向かう旅客機を操縦予定だったが、出勤が遅れた上、出発前に行ったアナウンスの内容が支離滅裂だった。機長が酒に酔っているのではないかとの疑念を持った乗客の一部が搭乗を取りやめ、出発前に機長は交代させられた。
サンスポ.com 「ガルーダ子会社社長が辞意 パイロットの飲酒疑惑で」
所有機体はすべてエアバスA320(一部A320 neo)。
公式サイトで予約する場合、海外からのクレジットカードは非対応。インドネシア国内での決済手段(インドネシア発行のクレジットカード、対応銀行のデビットカード、ATM払い)しか使えない。どうしても日本のクレジットカードが使いたい場合、Tiket.comなど別の予約サイトから予約するとよい。
座席 | エコノミークラスのみ |
飲食物 | 有料 |
機内エンターテイメント | なし |
シートピッチ | 29~30インチ |
預け荷物 | 10kgまで |
マイレージプログラム | ガルーダマイルズで貯めることが出来る |
2019年Airlineratings.com安全性評価 | ★★★★(ただしかつて星1つを記録した) |
ライオンエア(Lion Air)
2000年に設立されたLCC。基本的にいつでも遅延しており、朝一の便でないと定刻通り出発することがない印象を受ける。また空港管理会社側の問題かもしれないが、預け荷物が出てくるのが非常に遅い。
飛行機内の空調が極端なことでも知られており、搭乗する際はかならず上着を持参すること。ただし、時々エアコンが壊れているため尋常じゃなく暑い時もある。安さと便数の多さ、それから地方・僻地へのルートを強みとしており、そのおかげかガルーダを抑えてインドネシアでの旅客総数No.1の航空会社となっている。
インドネシア人からの評価は「安い。けど、ね。」
過去にオーバーランによる死亡事故を起こしたこともあるが、生存者ゼロの墜落事故は未だない。滑走路を外れて牛をはねたこともある。2018年のAirline ratingによる安全性評価では、インドネシア最高となる★6を獲得した。
しかし2018年10月29日、ジャカルタ発パンカルピナン行きのJT610便(最新型のボーイング737-800MAX機)が消息不明の後、墜落と確認。同社にとって初の墜落事故となった。その後の報道で乗客・乗員全員死亡が確認された。この事故を受け、2019年のAirlineratings.com安全性評価はレーティングなしとなってしまった。
公式サイトで予約する場合、海外からのクレジットカードは非対応。インドネシア国内での決済手段(インドネシア発行のクレジットカード、対応銀行のデビットカード、ATM払い)しか使えない。どうしても日本のクレジットカードが使いたい場合、Tiket.comなど別の予約サイトから予約するとよい。BCAの場合、klickBCAなら使える。Mobileはない。
Lion PassportというFFP兼上級会員(?)プログラムがあるが、オンライン登録は不可で、ライオンエアーのオフィスなどに出向かないと登録できないというめんどくささがある。ビジネスクラスのみ毛布・枕の貸し出しあり。使用機材はすべてボーイング737。ただし、最近は巡礼用の国際線にボーイング747が導入されている。
座席 | エコノミークラス・ビジネスクラス |
飲食物 | 有料(短距離路線では販売なしもある)、ビジネスクラスでは提供あり |
機内エンターテイメント | なし |
シートピッチ | 29インチ(E)・38インチ(C) |
預け荷物 | 20kg(E・国内線)、30kg(E・国際線&C・国内線)、40kg(C・国際線)、50kg(F) |
マイレージプログラム | あり? |
2019年Airlineratings.com安全性評価 | レーティングなし(2018年度中に一時は星6を記録したが、前述墜落事故により2019年はレーティングなし) |
4時間遅延しようが、平気で飛ばします。
バティックエア(Batik Air)
ライオンエアーの子会社ながら、こちらはフルサービスキャリア。2013年にライオンエアーから機体を借り受け運行を開始した。格安航空会社が運営するフルサービスキャリアとしてはバティック・エアが世界初である。社名の由来は、インドネシアの伝統工芸品で伝統的な生地を意味するバティックから。
親会社のライオンエアーと被る路線もあるが、客層が異なるので問題はないらしい。ライバルはFSCのガルーダ・インドネシア航空か。Airlineratings.comの評価は安全性・機体性能ともにインドネシアの航空会社中トップ。ただし2019年はライオンエアー墜落事故のあおりを受け、こちらもレーティングなしに。
料金的には時期によってはLCCのライオンエアーと変わらないこともある。ガルーダと比べると圧倒的にこちらのほうが安い。遅延率もライオンエアよりは遥かに良い。
公式サイトで予約する場合、海外からのクレジットカードは非対応。インドネシア国内での決済手段(インドネシア発行のクレジットカード、対応銀行のデビットカード、ATM払い)しか使えない。ただしデビットはBRIのみ。どうしても日本のクレジットカードが使いたい場合、Tiket.comなど別の予約サイトから予約するとよい。ただしTiket.comではビジネスクラスの予約は出来ない。
現在はボーイング737とエアバスA320の双方を所有。
座席 | エコノミークラス・ビジネスクラス |
飲食物 | 提供される。エコノミークラスでは酒類の提供なし。 |
機内エンターテイメント | シートスクリーンにオンデマンドあり。USBポートもある。ビジネスクラスでは電源も。 |
シートピッチ | 32インチ(E)・45インチ(C) |
預け荷物 | 20kgまで(E)・30kgまで(C) |
マイレージプログラム | あり |
2019年Airlineratings.com安全性評価 | ライオンエアー墜落事故のあおりを受け、レーティングなし。 |
バティックエアに乗ってみた感想はこちら↓↓
ウィングス・エア(Wings Air)
ライオンエアの子会社として2003年に設立された。基本的にプロペラ機で運行しているイメージ。筆者は乗ったことがありません…。身近なところでは、ジャカルタ(ハリム空港)-バンドン路線があります。約35分、400,000ルピア(3,000円)のフライトです。
ライオンエアーグループでありながら、なぜか2019年Airlineratings.com安全性評価は7段階中★6をつけた。バティックエアでもレーティングなしなのに謎である。
座席 | エコノミークラスのみ |
飲食物 | 有料(短距離路線では販売なしもある) |
機内エンターテイメント | なし |
シートピッチ | 29~30インチ |
預け荷物 | 10kgまで |
マイレージプログラム | 不明 |
2019年Airlineratings.com安全性評価 | ★★★★★★ |
インドネシア・エアアジア(Indonesia AirAsia)
スカイトラックス社のLCC部門でトップに輝いたエアアジアグループのインドネシア支店。オーストラリア、タイ、マレーシア、シンガポールに国際線を就航している。国内線は主要都市のみで、路線数はそこまで多くはない。なおインドネシアでは他のエアアジア系列の航空便(エアアジアXなど)も就航している。
ただし航空会社受難の年といわれた2014年にインドネシア・エアアジア8501便墜落事故を起こしており、こちらの事故は2回のマレーシア航空墜落事故(一つは撃墜)とともに記憶に新しい。
モバイルチェックインシステムが優れており、アプリでチェックインを完了し搭乗券を発行すると、そのまま搭乗ゲートまで行けるし、搭乗ゲートもスマホ画面で通るとが出来る。日本のクレジットカードでも予約できる優れもの。
ジャカルタのスカルノハッタ国際空港において、国際線のターミナル3移管が進む中、なぜか2018年11月の発表で国内線・国際線を全便ターミナル2に集約するとの発表があった。これに伴いエアアジア国際線がターミナル3からターミナル2に移り、ターミナル2は引き続き国際線としても利用されることに。
使用機材はエアバスA320のみ。
座席 | エコノミークラスのみ。ただしビジネスクラスではないが、追加料金を払って広い席を予約できる。 |
飲食物 | 有料(ただし事前のオンライン予約で15%OFFで注文可能) |
機内エンターテイメント | なし |
シートピッチ | 29インチ(追加料金で広い座席あり) |
預け荷物 | ブッキング時の前払い料金次第(空港で支払う場合さらに高額になる) |
マイレージプログラム | あり(Big Points) |
2019年Airlineratings.com安全性評価 | ★★★★★★ |
スリウィジャヤ航空(Sriwijaya Air)
2003年に独立系航空会社として設立された。スマトラ島がベースだが、ハブ空港はジャカルタを利用している。スマトラ島を中心にジャワ島、カリマンタン島、スラウェシ島、および西ティモールのクパンや西パプア州などを結んでいる。その他、ジャカルタからシンガポール、マナドからペナンへの国際線を運航している。
フルサービスキャリアの部類に入り、フライト中は全搭乗客に軽食が出る。その他特徴的なサービスとして、ビジネスクラスの乗客はラウンジアクセスの他、自宅やホテルまでの送迎サービス(しかもゴールデンバード、つまりシルバーバードのリムジン版)がある模様。
主な使用機材はボーイング737。旧式機材が多い。かつて栄えたシュリーヴィジャヤ王国から名づけられた。
2018年11月、ガルーダインドネシア航空が資本提携に乗り出すとの報道があった。しかしその後わずか1年足らずで提携は解消された。
2021年1月9日、ジャカルタ発ポンティアナック行のSJ182便が離陸4分後ジャカルタ沖プロウスリブ周辺で墜落する事故が発生。
座席 | エコノミークラス・ビジネスクラス |
飲食物 | 無料(エコノミーでも提供される) |
機内エンターテイメント | なし |
シートピッチ | 28~29インチ(E)・ビジネスクラス不明 |
預け荷物 | 20kgまで(E)・30kgまで(C) |
マイレージプログラム | 不明 |
2019年Airlineratings.com安全性評価 | ★★★★ |
ナムエアー(NAM AIR)
2013年に設立されたスリウィジャヤ航空子会社で、同社が就航していない航路を多く手掛けている。元はガルーダ、バティックエアに対抗するFSCとして設立を検討されていた。
主な特徴は、初めてすべての運行路線でキャビンアテンダントのヒジャブ着用を許可したこと。その後、2015年に親会社のスリウィジャヤ航空も追随した。それまで、限定的路線でヒジャブ着用を許可することはあったが、すべての運行路線というのはナムエアーが初めてだった。
使用機体はボーイング737のほか、双発プロペラ旅客機ATR72を保有している。航空会社の名前の由来は、チャンドラ・リーの父ロ・クイ・ナムにちなんで命名された。(←誰それ?)。
2019年Airlineratings.com安全性評価では、スリウィジャヤ航空と抱き合わせの扱いを受けてしまった。それでも一応★4を獲得。
その他の航空会社
トリガナ航空(Trigana Air)
1991年の創業以来、14件の重大事故が発生している。2015年にはトリガナ航空267便墜落事故が起きている。2018年のAirlineratings.com安全性評価は、最低評価の★1つ。ちなみに★1つは、世界中の航空会社の中でも6社しかない。他は北朝鮮、スリナム、ネパールの航空会社。
メルパティ・ヌサンタラ航空(Merpati Nusantara Airlines)
1966年に設立された老舗航空会社。かつてはガルーダに次ぐ、国内2番目の規模の航空会社だったが、2011年にメルパティ・ヌサンタラ航空8968便墜落事故が起き、その後2014年以降すべての運行を停止している。ヌサンタラとは、インドネシア語でたくさんの島々、諸島、群島という意味で、インドネシアそのものを指す別名でもある。
2018年11月、地場系投資会社が資本投入して負債を解消することで再生に乗り出すとの報道アリ。
トランス・ヌサ(Trans Nusa)
2005年に設立。トリガナ航空との業務提携から開始した。2010年からはスリウィジャヤ航空と業務提携。ハブ空港はバリ島デンパサールと東ヌサトゥンガラのクパン(東ティモールと同じ島の西側)。ジャカルタはハリム空港から発着している。保有期待は8機のみで、いずれも100人乗り未満の小型機である。2018年のAirlineratings.com安全性評価は★2つ。
カルスター・アビエーション(KalStar Aviation)
2008年に設立。運輸省からの通達により、技術面及び財務面で課題があるため、2017年11月末を持って運航停止となった。主にジャワ島・カリマンタン島・バリやクパンなどのヌサトゥンガラを結ぶ。2018年のAirlineratings.com安全性評価は★2つ。過去オーバーランあるが、死者は出していない。
エクスプレス・エアー(Xpress Air)
2003年に運航開始。インドネシア東部における主要航空会社の一つ。パプアやスラウェシ、マルク、ヌサトゥンガラを結ぶ。主要ハブ空港はマカッサル、その他のハブはジャカルタ(スカルノハッタ)とリアウのタンジュンピナン(Tanjung Pinang)。保有機体は10機で、うち4機はボーイング737-300。その他、マレーシアへの国際線も運航している。
2018年のAirlineratings.com安全性評価は★2つ。過去オーバーランや不時着といった事故はあるが、いずれも死者は出していない。トリガナ航空やトランスヌサ航空など、安全性評価の対象からそもそも外されてしまっている中、しれっと2019年も★4を獲得。