デルタブルースがメルボルンカップを制覇した。
フジキセキがシャトル種牡馬として出され、キンシャサノキセキが誕生した。
ブラックキャビアという無敗の短距離馬がいた。
大半の日本人にとって、オーストラリア競馬のイメージはこの程度だったでしょう。
そう、2013年までは。
オーストラリアで活躍する日本馬たち
2014年、ハナズゴールがシドニーのロイヤルランドウィック競馬場で開催されたGⅠオールエイジドステークス(All Aged Stakes)を勝ちました。
また同年、アドマイヤラクティがGⅠコーフィールドカップ(Caulfield Cup)を勝ちました。その後、1番人気で迎えた次走GⅠメルボルンカップで最下位入線の後、ホクトベガ以来となる海外での客死を遂げるといった悲しい出来事がありました。
この2頭の活躍が日本競馬界の目をオーストラリアに向けさせたのです。上記2頭は日本での重賞勝ちこそあれ、日本国内のGⅠレースでは一枚格落ちといった存在でした。
「日本のG2・G3クラスの馬でもオーストラリアでは勝てる」
日本の競馬関係者にそう思わせました。
オーストラリアのレースは賞金額も高いです。前述のオールエイジドSは約3600万円、コーフィールドCに至っては2億2500万円です。一方で日本の最高賞金額は、ジャパンカップの2億5000万円(2015年現在)です。
そして2015年、早速動きがありました。
3月21日、リアルインパクトがGⅠジョージライダーステークス(George Ryder Stakes)を勝利。3歳で安田記念を制して以来、実に4年ぶりのG1勝利です。
同日行われたGⅠランヴェットステークス(Ranvet Stakes)ではトーセンスターダムが2着に入ります。さらに翌週の3月28日、GⅠザ・BMW(The BMW)でトゥザワールドが2着に入りました。
上述の通りリアルインパクトは4年ぶりのGⅠ勝利。トーセンスターダムとトゥザワールドは昨年のクラシックの主役級でありながら、GⅠには縁がありませんでした。
このように超一流には及ばないが、一流馬ならば良い勝負が出来るのがオーストラリア競馬です。秋には高賞金額のレースが目白押しです。特にコックスプレートやメルボルンカップは、日本では天皇賞秋と時期が被るため、天皇賞秋では実力で一枚劣る馬や出走が叶いそうにない馬はこちらに回るのではないかと推察されます。
そう、今日本競馬界にとってオーストラリアが熱いのです!!!
オーストラリア最大の都市・シドニーの競馬場
馬産国でもあるオーストラリアには大小300を超す競馬場が存在します。町に一つは競馬場があるといっても過言ではありません。人口が5000人程度の町にでも競馬場があります。
今回、オーストラリアの競馬場を2か所、巡る機会を得ました。
一か所目は、昨年ハナズゴールがオールエイジドSを制したロイヤルランドウィック競馬場です。大都市シドニー市内に位置し、オーストラリアンダービーが行われるなど格式は一級品の競馬場。
スタンドも日本の競馬場とは比較にならないくらいオシャレです。まさに「競馬は貴族のスポーツ」を体現しているかのようです。
驚くことに、出走馬を人ではなく誘導馬が馬を曳いているシーンも見ることができました。日本ではまずお目にかかれない光景です。
オーストラリアでの馬券の買い方と特徴
当然、オーストラリアでも馬券は買えます。日本同様、機械式のものとカウンターで購入するものの2パターンがあります。
馬券の買い方も日本とはやや異なります。基本的な券種はほぼ一緒であり、馬連の流しや三連単ボックスといった買い方も出来ます。
違うのは金額です。日本では、一部の特例を除き一点の買い目の最低金額は100円と決まっています。しかしここオーストラリアはその限りではありません。
例を挙げてみましょう。下の写真は三連単を4頭ボックス(2,7,11,13)で購入したものです。仮に日本で各100円で購入したとすると、24点で2400円必要です。ところがこの馬券は25ドル分購入しています。
するとどうなるか?そこで注目するのが104.16%という数字です。
1ドル当たりの配当金額にこの倍率を掛けたものが、実際に払戻される金額となります。つまり仮にこのレースにおける三連単の配当金額が50ドルだった場合、50ドル×104.16%=52.08ドルが払い戻されます。この倍率は100%を切ることも可能です。
ちなみにオーストラリアでは毎日のようにどこかしらで競馬が行われています。日本同様に他の競馬場の馬券も買えます。他場の様子はカウンター後ろの大型スクリーンで放映され、オッズも載っています。
この日は土曜日、しかも祝日ということもあり、かなりの競馬場でレースが行われていたようです。5分おきにレースがあって、とてもではないですが全ての競馬場を買うことは難しいです。
色鮮やかで優雅なレースコース
この日は見事な晴天。観客はドレスアップして、真昼間からビールとワインを嗜んでいます。
優雅ではありますが、一方でレース中最後の直線で叫ぶところは万国共通なのでしょう。
まとめ
一つ印象的な出来事がありました。この日はオーストラリアの祝日、アンザックデー(ANZAC Day)でした。
アンザックデーは毎年4月25日、第一次世界大戦のガリポリの戦いで勇敢に戦ったオーストラリア・ニュージーランド軍団(ANZAC)の兵たちと、当時国の為に尽力した人々のために追悼を行う日です。
レースの合間に国歌斉唱がありました。その際人々は立ち止まり、脱帽し、頭を垂れていました。競馬場内はそれまでの賑やかな雰囲気を一変させ、静寂に包まれました。
今回のランドウィック競馬場訪問。競馬を通じて、様々な文化の違いを垣間見ることが出来る、非常に有意義な機会となりました。そんなロイヤルランドウィック競馬場は、夕立を前にして神秘的な雰囲気を醸し出していました。