トランスジャカルタで白昼強盗!ジャカルタで安全な社用車を会社に支給してもらうには?

 

先日、インドネシア大使館からメールが届きました。題名は『大使館からの注意喚起(刃物による強盗被害)』。内容を要約すると以下の通りです。

  • ジャカルタ市内・モナスからPulo Gadungへ向かう白昼のトランス・ジャカルタ車内において、刃物を所持した犯人に邦人が脅迫され、財布を奪取される強盗被害が発生しました。
  • 目的地への移動に際しては、なるべく自家用車、社用車等信頼できる車両を使用するようにし、やむを得ず徒歩やトランス・ジャカルタ等公共交通機関で移動する際には、周囲の警戒を怠らないようにしてください。
  • 仮に強盗に遭遇した際には、抵抗せずに身の安全を第一に考えて行動してください。

白昼堂々と警官もいる公共交通機関で強盗というのも珍しいなと思いました。もっとも警官が護衛していた現金輸送車を強奪する国なので、何があってもおかしくはないですけど。

 

 

大使館は社用車・自家用車の使用を推奨

さて、今回の記事は別にジャカルタの治安について述べるわけではありません。大使館メールの中で気になる項目があったので、それをピックアップします。

大使館メール要約の2段目はこう書かれています。

目的地への移動に際しては、なるべく自家用車、社用車等信頼できる車両を使用するようにし、やむを得ず徒歩やトランス・ジャカルタ等公共交通機関で移動する際には、周囲の警戒を怠らないようにしてください。

また本文中ではこう書かれています。

つきましては、これまで大使館より累次にわたり強盗被害に関する注意喚起を行っているとおり、ジャカルタ市内の移動はなるべく自家用車、社用車等信頼できる車両を使用するようにしやむを得ず徒歩での移動やトランス・ジャカルタ等公共交通機関を利用する際には、改めて以下の点に特に留意の上、周囲に警戒を怠らないようにしてください。

なるほど。日本大使館はこれまで公共交通機関や徒歩での移動は治安的に問題があるため、可能な限り社用車(自家用車)での移動をすることを推奨しています。

さて、では現実問題、社用車を使うことが出来る在留邦人ってどれくらいいるのでしょうか?現地採用者も増えてきた昨今、筆者の周りを見渡しても半分くらいですかね。筆者自身も社用車の支給はなく、日々の通勤や移動はGo-jekやUber、あるいは徒歩といったことが多いです。一か月に使う交通費はだいたい1Juta(100万ルピア=約8500円)から1.5Juta(150万ルピア=約12,500円)程度です。

では筆者のように社用車がない日本人が、会社に社用車を準備してもらうにはどうしたらよいか?今回のテーマです。

 

コストを説明する

社員に新しく社用車(ドライバー含む)を支給するとなると当然費用が発生します。さすがに何の説明もなしに「社用車支給してください」では会社も納得しません。余計な費用を押さえたい会社側としては、費用がどれくらいかかるのか知りたいところです。

まず想定される費用としてはドライバーの給与。年齢や経験にもよりますが、相場としては最低賃金よりやや高めの4,000,000ルピア/月程度でしょうか。これは会社側がドライバーを社員として雇用する際に支払う給与になります。

月収4Juta(4,000,000ルピア)というのはドライバーの給与相場としてだけでなく、一般従業員の給与としても設定しやすい基準の一つでもあります。というのもインドネシアでの年収は一般的にTHRを含めて月収の13か月分とイコールになります。月収4Jutaの場合、年収換算すると年収52Juta(5,200万ルピア)になります。

インドネシアの税法上、個人所得税(pph21)は会社側が源泉しなければならないのですが、日本と同様に基礎控除額が設定されています。基礎控除額は結構な頻度で改訂があるのですが、2018年1月現在では54Juta(5,400万ルピア)です。実際はさらに業務控除や扶養控除がありもう少し控除額が増えるのですが、万人に共通しているのはこの金額です。

会社側は従業員の年収が基礎控除額54Juta以下の場合、個人所得税を源泉する必要がありません。つまり給与計算の際にpph21を計算したり、毎月納税をする必要がなくなります。こうすることで会社側の税務・給与計算の負担を減らすことが出来ます。

ただし休日出勤や残業手当(40,000ルピア/1時間程度)など別途支給分で、総支給額が年間控除可能額を越えた場合、超えた月から、あるいは12月給与の年末調整にて調整する必要があります。また特に夜遅くなったときは、会社支給の残業手当とは別に、個人のポケットマネーからチップを渡すことを推奨します。こちらは残業時間にもよりますが、50,000~100,000ルピア程度です。

 

車両の手配を準備をする

会社に費用と手間を圧縮する説明をしたら、次は車両の手配です。具体的には以下の三つの方法があります。

  1. 会社で購入し、会社の資産とする。
  2. 個人で購入し、個人の資産とする。
  3. 車付きドライバーを雇用する

まず、会社の資産として計上する場合。メリットとして、減価償却費で費用化出来ます。また所有者が会社になるので、駐在員交代など社用車を使用する日本人が変わっても、特に変更手続きは必要ありません。一方で、社用車(四輪セダンなど)の場合、税務上は50%までしか費用計上できず、残りの50%は損金不算入となるデメリットもあります。

次に個人で購入する場合。特にインドネシアで長く過ごされる予定の方や、インドネシア国内で転職する予定のある方に挙げられる選択肢です。任期が決まっている駐在員にはあまり当てはまりません。また、3月末までの個人所得税確定申告において、個人資産として報告する義務があります。

最後に車付きドライバーを雇用する場合です。これはやや特殊なケースですが、すでに車を自分で所有しているドライバーを車ごと雇用します。車を購入する必要がないので現金支出を抑えることはできますが、一方でドライバーの給与に車両代が上乗せされるので、給与負担は大きくなります。また、ガソリン代や定期点検代、消耗品費、それから事故時の負担割合など、事前に会社とドライバーで雇用契約を交わす際に取り決める事項が多くなります

それでも会社に社用車を新規に頼む場合は、初期費用の少ない車付きドライバーの選択肢が一番有用ではないでしょうか。

 

社用車が必要な理由を考える

では最後に、「本当に社用車が必要か」を検討します。今回の記事は、法人が公共交通機関を利用したことで強盗被害に遭遇したことから、邦人の安全を管轄する大使館は「公共交通機関の使用を抑え、社用車・自家用車を利用すること」とのお触れを出したことから書き始めました。

じゃあ筆者の個人的な意見はというと、「社用車は必要ない」です。前述した通り、通勤や移動はライドシェア(Uber, Go-jekなど)やタクシーで十分賄うことが出来ます。そのほうがコストも安く済みます。会社に社用車のコストを負担させるくらいなら、自分の給与を増やしてくれとも思います。

今社用車が支給されていない会社は、「社用車を従業員に支給することのメリット<社用車を従業員に支給することのコスト」という考えでしょう。この状況をあえてひっくり返すには、相応の理由がいります。今回のように身の危険があるから、大使館が喚起しているからという理由だけで会社の方針を変えるような会社は、そもそも最初から社用車を支給しているはずです。

そう考えると今回の大使館のお触れは「企業と従業員の現状を把握していない上から目線の物言い」ではないかという気もします。もっとも、あくまで推奨であって強制ではないので、それに従うかは当然会社や個人の自由です。その結果、今回のような強盗被害に遭うことも、いわば自己責任です。

海外生活は、日本では考えられないようなリスクが潜んでいます。それらすべてに対処するとなると莫大なコストがかかります。リスクとコストを比較して、自分に見合った生活を送っていくことが肝要でしょう。ただそれを自分自身で日々取捨選択しなければならない状況というのは、思っている以上に自分を頼りがいのある人間に育てていってくれるものです。

 

というわけで今回の結論。

  1. 社用車はコスパを比較した時、必ずしも必要ではない。
  2. 支給されるかどうかは会社の方針一つ。現状を変えることは難しい。
  3. 日々リスクとコストを考え、自分にあったリスクヘッジを行うこと。