航空会社の「001便」はどこを飛んでいる?「以遠権」による格安フライトにからめて。

航空会社の「001便」はどこを飛んでいる?「以遠権」による格安フライトにからめて。

 

世界のハブ空港として名高いシンガポール・チャンギ空港。ターミナルは4つ、国土の関係から全てのフライトが国際線という異質な空港です。ジャカルタから物理的に近いこともあり、筆者も良く訪れます。そんなチャンギ空港には世界各国から様々な航空会社が乗り入れています。乗り換えで搭乗案内のスクリーンを見ていると、実に様々な航空会社、行き先を目にすることが出来ます。

先日シンガポールを訪れた際、ふとスクリーンを眺めたとき、目についた便がありました。

”QF 001 London”

オーストラリアのフラッグキャリア、カンタス航空001便ロンドン行きです。ここでいくつか疑問が浮かびました。

  1. カンタスなのに、オーストラリアに関係ないシンガポールからロンドン行き?
  2. 001便ということは、もしかしてその航空会社にとって何か思い入れのある便なのか?

 

 

そこで今回は、「各航空会社にとって思い入れのある「001便」はどこを就航しているか?」について考察してみることにしました。

最近は便利なもので、Google検索でIATAの2文字コードと便番号を入力するだけでフライトの詳細や運行状況をを見ることが出来ます。この方法で、何社か航空会社をチョイスして検索してみました。

 

 

カンタス航空 QF001

出発 シドニー(SYD) 昼過ぎ(14:55)
経由 シンガポール(SIN) 夜(22:15)着→深夜(23:55)発
到着 ロンドンヒースロー(LHR) 早朝(6:55, +1)

 

まずは今回の記事のきっかけとなったカンタス航空001便です。オーストラリアと全く関係ないシンガポールーロンドン間のフライトは、実はカンタス航空の持つ以遠権によるものでした。

以遠権とは:国際航空運輸において、自国から相手国を経由して、相手国からさらに先にある別の国への区間についても営業運航を行なう権利(Wikipediaから抜粋)

そのため、実際にはQF001便は「シドニー発シンガポール経由ロンドン行き」となります。しかし以遠権フライトとはいえ、シンガポールーロンドン間のみの予約・搭乗も可能です。試しにカンタス航空のサイトでチェックしてみましたが、問題ありませんでした。

以遠権フライトは通常のフライトよりも安くなる傾向にあります。同じ日付で検索してみたところ、シンガポール航空はSGD 2,644ブリティッシュエアウェイズはSGD2,275に対し、カンタス航空はSGD 1,394でした。仮にシンガポールからロンドンへ行こうと思った場合、ブリティッシュエアウェイズやシンガポール航空も選択肢に上がるでしょうが、その際はぜひカンタス航空もチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

 

※注釈

記事公開後、カンタス航空の001便については、以遠権でなく、旧宗主国イギリスの関連国(シンガポール、オーストラリア共に)のためフライトが可能なのではないか、という意見も頂きました。たしかにそういう観点から検討してみるのも興味深いと思います。

 

全日空 NH001

出発 ワシントン(IAD) 正午(12:20)
到着 東京成田(NRT) 昼過ぎ(15:25, +1)

 

続いて日系航空会社です。ANAはワシントン発成田行きの便を001便としています。

通常、航空会社は往復の便については便番号を連番で振り分けています。NH001便はワシントン発成田行き、NH002便は成田発ワシントン行きといった感じです。ただ、ここにも航空会社による違いがあります。自国発の便を001便とするか、自国着の便を001便とするか、です。前述のカンタス航空は自国シドニー発の便を001便に設定していましたが、ANAは成田「着」の便を001便に設定しています。実はこの基準については各航空会社バラバラで、あまり統一性を見ることはありませんでした。

ANAにとってワシントンー成田線は非常に思い入れのある路線です。1986年に初めて就航した国際線定期便はグアム線でしたが、その後同年にワシントンー成田線とロサンゼルスー成田線を就航させています。現在グアム線は撤退しているので、ワシントン線はANAにとって最古の国際線定期就航路線となっているのです。2017年にメキシコシティ線が就航するまでは、長らく最長距離の路線としても有名でした。

 

※注釈

記事公開後、001便の割り当ては西回りで統一されているのでは?という意見を頂きました。確かに西回り経路を取っている航空会社は多いですが、東回りに割り当てている航空会社もあります。アライアンスで違ったりするのでしょうかね。意見募集中です。

 

日本航空 JL001

出発 サンフランシスコ(SFO) 夕方(16:05)
到着 東京羽田(HND) 夜(19:15, +1)

 

JALの001便も、ANA同様思い入れのある路線となっています。サンフランシスコー羽田は、1953年にJALにとっても、また第二次世界大戦後の日本の航空会社としても初の国際線路線です(東京羽田ーホノルルーサンフランシスコ)。羽田の発着枠を圧倒的にANAに占領されつつあるJALですが、この路線だけは絶対に手放さないでしょう。

 

シンガポール航空 SQ001

出発 サンフランシスコ(SFO) 深夜(1:15)
経由 香港(HKG) 早朝(6:35, +1)着→朝(8:00)出発
到着 シンガポール(SIN) 正午前(11:50)

 

シンガポール航空の001便も、カンタス同様以遠権を利用した路線となります。こちらも同社にとって思い入れのある路線です。シンガポールー香港ーサンフランシスコ線は、1979年に開設したシンガポール航空にとって初の太平洋線であるシンガポールー香港ーホノルルーサンフランシスコ線を引き継いでいます。

 

チャイナエアライン CI001

出発 ホノルル(HNL) 昼過ぎ(14:55)
到着 台北桃園(TPE) 夜(19:30)

 

台湾の航空会社チャイナエアラインの001便はホノルル線です。これは、なんですかね。ドル箱路線なのか、あるいは初めて開設した太平洋路線の名残なのか。

 

大韓航空 KE001

出発 ソウル仁川(ICN) 夕方(17:40)
経由 東京成田(NRT) 夜(20:00)着→夜(21:20)発
到着 ホノルル(HNL) 朝(9:40)

 

大韓航空の001便もホノルル線です。ただしこちらは東京成田経由となります。ソウルー東京成田ーホノルル路線は大韓航空が初めてアメリカへ就航させた路線(ソウルー東京成田ーホノルルーロサンゼルス)の名残です。JALやSQと同じパターンですね。

 

マレーシア航空 MH001

出発 ロンドンヒースロー(LHR) 夜(21:35)
到着 クアラルンプール(KUL) 夕方(17:50, +1)

 

2014年に世界中を騒がせたマレーシア航空。実は元はシンガポール航空と同じだったこと(Malaysia-Singapore Airline)をご存知でしょうか。そのシンガポール航空は001便をアメリカ路線に設定しているのに対し、マレーシア航空は欧州路線を001便としています。こういうところにも、微妙な対抗意識が伺えるのかもしれませんね。

 

エアカナダ AC001

出発 トロント(YYZ) 昼(13:40)
到着 東京羽田(HND) 昼過ぎ(15:35, +1)

 

エアカナダの001便の就航地は、なんと日本です。現在は羽田線ですが、少し前までは成田線でした。しかし成田線が不振に喘ぎ、定期線から季節運航へと変わってしまいます。その結果、エースナンバーが経営良好な羽田線に移管されたようです。

 

アエロメヒコ航空 AM001

出発 メキシコシティ(MEX) 夜(18:35)
到着 マドリード(MAD) 昼(12:40, +1)

 

メキシコのフラッグキャリアであるアエロメヒコの001便はスペイン・マドリードです。こちらは1950年代に初めて欧州方面へ就航した二路線のうちの一つです(もう一つはパリ線)。アジア各国の航空会社の歴史をひも解くと、アメリカ就航(太平洋横断)がひとつの歴史の始まりのようですが、中米メキシコの場合は欧州路線がそれのようです。

 

デルタ航空 DL001

出発 ロンドンヒースロー(LHR) 朝(10:30)
到着 ニューヨーク(JFK) 昼過ぎ(13:30)

 

米系三大航空会社の一つ、デルタ航空はロンドン線が001便です。ロンドンは1978年に初めて大西洋路線を就航させた都市です(ただし当時はアトランターロンドン線)。

 

ユナイテッド航空 UA001

出発 サンフランシスコ(SFO) 夜(22:55)
到着 シンガポール(SIN) 朝(6:15, +2)

 

米系三大航空会社の一つ、ユナイテッド航空はシンガポール線が001便です。これはシンガポール航空と同様の路線です。両社とも同じスターアライアンスに属していますが、双方ともサンフランシスコ発を001便としているところは興味深いです。なぜシンガポール航空はシンガポール発を001便にしなかったのでしょうね。ちなみにこの路線は世界でも珍しい、到着が出発日の2日後となる便でもあります。

 

アメリカン航空 AA001

出発 ニューヨーク(JFK) 朝(8:00)
到着 ロサンゼルス(LAX) 昼(11:15)

 

米系三大航空会社の一つ、アメリカン航空の001便は珍しく国内線です。ドル箱路線のニューヨークーロサンゼルス線で設定しています。勝手なイメージですが、三大米系エアラインの中でアメリカン航空が一番「アメリカがナンバーワンだ!」と主張している航空会社のような気がします。

 

エミレーツ航空 EK001

出発 ドバイ(DXB) 朝(7:50)
到着 ロンドンヒースロー(LHR) 正午(12:25)

 

中東御三家の一つ、エミレーツはロンドンです。面白いのは中東御三家はいずれも自国発の便を001便に設定しているところですね。

 

エティハド航空 EY001

出発 アブダビ(AUH) 深夜(2:00)
到着 フランクフルト(FRA) 早朝(6:40)

 

中東御三家の一つ、エティハドはフランクフルトです。

 

カタール航空 QR001

出発 ドーハ(DOH) 正午(12:50)
到着 ロンドンヒースロー(LHR) 夕方(17:55)

 

中東御三家最後の一つカタール航空は、エミレーツ同様ロンドンです。

 

ブリティッシュエアウェイズ BA001

出発 ロンドンシティ(LCY) 朝(9:40)
経由 シャノン(SNN) 昼(11:00)着→昼(11:50)発
到着 ニューヨーク(JFK) 昼過ぎ(14:05)

 

ブリティッシュエアウェイズの001便は中々特徴的です。まずロンドン発なのですが、ヒースローではなくロンドンシティから出発します。その後、アイルランドのシャノンを経由してニューヨークへ向かいます。

ロンドンシティ発の往路では滑走路の長さが短いため、機体重量軽減のために搭載する燃油量を減らすことから、かつての大西洋横断航路のようにアイルランドのシャノン空港を経由して給油してからニューヨークへ向かいます。そしてシャノン空港では米国の入国・通関手続きを済ますことができます。これは、カナダの空港(カナダからアメリカに向かう場合、カナダでアメリカの入国審査を受ける)と同じシステムです。ちなみに復路(002便・004便)は直行で運航されています。

またBA001便とBA003便は、全席ビジネスクラス仕様のエアバスA318型機で運航しています。

 

ルフトハンザドイツ航空 LH001

出発 ハンブルク(HAM) 早朝(6:00)
到着 フランクフルト(FRA) 早朝(7:10)

 

ルフトハンザドイツ航空の001便もアメリカン航空と同様珍しく国内線に設定しています。

 

ニュージーランド航空 NZ001

出発 ロンドンヒースロー(LHR) 夕方(16:15)
経由 ロサンゼルス(LAX) 夜(19:25)着→夜(21:30)発
到着 オークランド(AKL) 早朝(5:30)

 

ニュージーランド航空の001便はすごいです。ロンドンを出発し大西洋とアメリカ大陸を横断してロサンゼルスへ。そのまま太平洋を横断してオークランドへ向かいます。ロンドンーロサンゼルスは11時間15分、ロサンゼルスーオークランドは12時間45分。総飛行時間は実に24時間、総飛行距離は約19,242km!丸一日かけて地球を半周する超ロングフライトですね。

 

001便が見つからなかった航空会社

有名どころだと以下の航空会社の001便が見つかりませんでした。恐らく運航はされていると思うので、検索で引っ掛からなかっただけかもしれません。何か情報をお持ちでしたらご提供お願いします。

  • ベトナム航空
  • タイ航空
  • アリタリア航空
  • KLMオランダ航空
  • エールフランス航空
  • アエロフロート
  • 中国国際航空
  • キャセイパシフィック航空
  • ガルーダインドネシア航空

 

ちなみに筆者在住のインドネシアの各航空会社(LCC含む)も調べてみましたが、全然情報が出ませんでした。ライオンエア001便とかシティリンク001便とかはあるのでしょうか。

 

まとめ

やはり001便、エースナンバーとだけあってそれぞれの航空会社にとって思い入れのある路線に設定されていることが多いようです。特にアジア圏の航空会社は、アメリカへ向けた初めての太平洋横断路線やその名残で設定されている路線が多く、当時いかに太平洋横断が重要だったかが窺えます。一方でアメリカン航空やルフトハンザドイツ航空など、国内線路線を001便にあてがっている航空会社もありました。

カンタス航空やシンガポール航空など、以遠権を絡めているフライトも多く見受けられました。そういえば日系航空会社は以遠権を使ったフライトを飛ばしていませんね。

今回001便を調べるにあたって、各航空会社の歴史なども調べ、実はシンガポール航空とマレーシア航空が元は一緒だったとか、ハワイが日本人にとって有名なのは昔から多くの航空会社の直行便が飛んでいて唯一のアメリカ行きの路線だったから(なのではないか)など、新しく知れたことも多いです。