ワイサックの夜、神聖な輝きが空に舞うボロブドゥールのランタンフェスティバル。

ジャカルタから飛行機で1時間、古都ジョグジャカルタ近郊にはインドネシアが誇る世界遺産『ボロブドゥール寺院』があります。9世紀のシャイレンドラ朝時代に建設された建物で、歴史の教科書でその名前を聞いた人も多いことでしょう。

イスラム教徒が9割を占める中、国是パンチャシラによって多宗教国家の建前を取るインドネシアにとって、仏教の聖地ともいえるボロブドゥールは何かと話題に上る場所です。

イスラム教の祝日が6日、キリスト教の祝日が3日あるのに、儒教(イムレック)・ヒンドゥー教(ニュピ)・仏教(ワイサック)は1日しか祝日がないあたり、この国の宗教別人口比率に応じているんだなと実感します。

さてそんな仏教にとって大切なワイサック(Waisak:仏教大祭・ブッダの生誕記念日)に、ボロブドゥール寺院では特別なイベントが開催され、その中でも目玉となるのがランタン上げフェスティバルです。

2023年のワイサックデーでは、タイのお坊さん32名が宗教儀式に参加するため、バンコクからボロブドゥールまで2カ月かけて徒歩で向かうということがニュースにもなりました。(じゃかるた新聞の記事

ランタン上げフェスティバルのスケジュールは毎年変わるようですが、2023年は17時半と20時の二部制となっていました。各部では①入場 ②蠟燭点灯 ③説法 ④ランタン上げ準備 ⑤ランタン上げ ⑥退場 という工程になります。そのため、実際にランタンを上げるのは入場から1時間後くらいです。

特別イベントはボロブドゥール寺院を正面に見据える広場で行われますが、この広場には囲いがされており、チケット所有者しか入場できないようになっています。ただし、囲いと言ってもちゃっちい柵があるのみなので、ランタン上げを見るだけならチケットを買わず周りから眺めることも可能です。

筆者は20時からの部に参加しました。

まず20時ごろに入場口に並ぶのですが、この時点では前の17時半の部の人たちがまだ退場をしておらず、結局清掃とセッティングが済んで入場できたのが21時前でした。座る場所は早い者勝ちになるので、みんないいポジションを取ろうと入場口に殺到するのですが、いつまでたっても入れずブーイングが起きていました。正直、今回のランタン上げツアーの中ではこの待ち時間(約1時間、群集の中で立ちっぱなし)が一番しんどかったです。子供連れには向かないかと思います。

ちなみにどうやらこの時、次期大統領候補で中部ジャワ州知事のガンジャル氏がボロブドゥールを訪れていたようで、そのためもあってか一般の入場が長引いたようでした。

入場してからは蝋燭台の間に一人ずつ並んで座っていきます。後々ランタンを上げる際は、この時に近くにいる4-6人で上げることになるので、友人・知人グループで来ている場合はなるべく固まって座っておくようにしましょう。

蝋燭台に火が灯され、幻想的な空間が作り出されます。そのあとは、30分くらいお坊さんの説法が続きます。般若心経なら自分も分かるのですが、英語なのかインドネシア語なのかもよく分からない説法の途中で礼が入るので、中々気を抜くことができません。

そしていよいよランタン上げ。願い事をシールに書いてランタンに貼り付けるのですが、このシールがまた剝がしづらいこと…。一緒のグループになったインドネシア人の兄ちゃんが手際よく剥がしてくれたのですが、コツを教えてもらいたいものです。

結構火が熱いので飛ばすまで持っておくのが辛いのですが、十分に暖めないと綺麗に飛んでいかないのでここは根性で押さえつけます。主催者側はみんなが同じタイミングで一斉に飛ばすことを想定しているようですが、そう上手くいくことはなく結構バラバラに飛ばしていきます。

ランタンは美しく飛び立ち、夜空に浮かび上がる様子はまさに圧巻です。参加者はランタンが空に昇る様子を見つめながら、心を清らかにし、自身の思いを込めます。この瞬間は参加者にとって特別な意味を持つ瞬間であり、希望や祈りを込めてランタンを上げることで自身の願いが叶うことを願います。

なおランタン上げは暖めが足りないと失敗して近くの木にぶつかってしまい、そのまま燃えます。木全体に火が燃え広がらないか心配になりましたが、結構な数がぶつかったものの、意外と大丈夫そうでした。一応、火を扱うイベントということで消防車も何台か準備されていました。

それぞれが写真撮影を済ませると、三々五々帰宅となります。イベント終了直後は皆がボロブドゥールから出ようとするので渋滞になりますが、少し抜けるとあとはジョグジャカルタ市街地まで夜中の一本道なのでわりとスムーズに帰ることができます。それでも1時間ちょっとくらいはかかりますが。

ボロブドゥールで開催されるワイサックの日のランタンフェスティバルは、美しい景色、神聖な雰囲気、そして参加者の心に感銘を与える体験が待っています。この祭りに参加することで、仏教の精神を理解し、自身の心の成長や平穏さを追求するきっかけとなるでしょう。ぜひこの特別な祭りに参加して、ボロブドゥール寺院の魅力とワイサックの祭りの神秘を堪能してください。

ランタン上げチケットの手配

オンラインで予約することもできますし、日本語ツアーを申し込む方法もあります。
今回筆者は「ジャワ島旅行情報サイト」を運営しているJavanava Travelcafeから日本語ツアーを申し込みました。夕食と往復送迎がついて695,000ルピアでした。

Twitter:@javatravelinfo

【注意点】
・ワイサックの日は5月の満月の日で、日にちは毎年変わります。
・宗教行事であるため、過度な服装は避けましょう。なお2023年は「白色の服」着用というルールができていました。